「」 「……なにかな空目クン」 「見えているんだな?」 「……見えてます……」 あぁ、拝啓天国……かはわからないけどとりあえず天国のお父さんお母さん! 俺はなんだか真っ黒い人に目を付けられたようです! 「なぁ空目、どこに行くんだ?」 空目の用事とは、授業が終わって飯の時間! という今だった。 ……あ、飯の時間って一言で片付けてるけど本当は色々あるんだけど全部割愛! 「……空目ー?」 答えてくれない。 けれど背中で『黙って付いて来い』と語っている。 ……言わない気か……。 途中合流した臙脂色の少女が、おろおろとしながら俺の後ろを歩いてくる。 ……もう少しゆっくり歩いてやれば良いのに。 今にも転びそうだ。 「……お前は王様か……」 「一部ではそう呼ばれているが」 「は?」 ……あ、しまった。 いきなり返事するから思わず失礼な返しを。 「魔王だとか陛下だとか、な」 「……へー。お似合いじゃないか、真っ黒だし」 ……知ってるよ、と言ったらこいつはどんな顔をするのだろうか、なんて思った。 いや、言わないけど。 「……ここで話をしよう」 屋上だった。 「……人気のないとこ、来たかったのか」 「ああ」 「きゃー空目くんだいたーん」 だるくボケるが、空目は冷めた目で俺を眺めるままだった。 ……ボケたときだけはその冷めた目やめて欲しいな、うん! 特にスベったとき! 「……ふぅ。冗談だから、そんな目で見ないでよ。で、何?」 「……高校で」 「あ?」 「この高校で、何か見たか」 ――行き成り、そこ来るか。 「……何か、って?」 「何でも良い。おかしなものを見たか」 「……お前が言いたいのはどういうおかしなものなんだ?」 「何でも良い。人には見えない少女だって、見えない狗だって、何でも良いんだ」 「……とりあえず後ろの子は見えるけど」 言えば、空目は表情を強張らせる。 ……怖いよ怖いって。 無駄に容姿が整ってる分、余計怖いんだって空目クーン……。 「――お前は」 「お前は、敵か?」 「……えー、と。敵っていうと、具体的にどんな意味で?」 「俺の……俺達の、脅威に成り得る存在か?」 「んー……お前の敵がどんなんか知らんからな。まァ、なるべく敵にはなりたくないかなぁ?」 「……魔女を、知っているか」 「魔女ぉ? そりゃ、知ってるけど……随分ファンタジーなんだね、空目」 「――もういい」 「あえ?」 あれ、もしかして俺呆れられたのかな。 つまりこれって俺失敗? 「来い。紹介したい奴らが居る」 「は?」 俺は、まだ黒い美人に現在進行形で拉致されてます。 ≪戻る トップ * 怪異により燃えた家 両親への想い 母の為に。父の為に。 怪異を起こす少年 ――幸せを、摩り替えた。