「アッシュ、アッシュ、」

「……寝るには早いんじゃないか?」
「だってアッシュに逢いたかったんだ」
「……ふん」

アッシュは俺たちになっても変わらなかった。嬉しいと思った。
俺たちになったからといって特別な風には動かなかったんだ。
物事でしか人を計れない奴らとは違うって、また教えてくれたんだ。

「眼鏡は何か言ってたか」
「俺たちはオリジナルの構成物質だって」
「ローレライはきちんと仕事をしたんだな」
「そうだね、ローレライ、ちゃんと仕事したんだね」

俺たちの会話は、必然的にみんなとローレライのことばかりだった。
外を知らないアッシュは、俺に話してもらうしかないんだ。
でも俺はアッシュに物を聞かれることがうれしくて、自分から言わない。
だからいつもアッシュは不機嫌な顔。でも本当は機嫌がいいって、知ってる。

「アッシュ、」
「……ん」

キスしていい? あ、聞くの、忘れた。まあいいや。
アッシュは静かに眼を閉じて、俺のキスを受けた。優しいね。
唇を離せば、アッシュが睨みつけてくる。うん、ごめんね、アッシュ。

「ちゃんと、言え」
「ごめん、……もう一回、いい?」
「……勝手にしろ」

アッシュの勝手にしろは、いいよって合図。だから俺は遠慮なくアッシュにキスする。
噛まれないようにゆっくりと舌を差し込めば、アッシュも絡ませてくれた。
ん、んとどっちの声だかわからない声がした。ああ、たぶん、どっちもなんだろうな。
俺たちは同じだから、こまる。

「んっ……アッシュ、」
「な、んだ……」
「俺たち、ずっと、一緒だね」
「……そう、だな」
「俺、ずっとずっと、アッシュのこと、好きだよ」
「そう、か」
「アッシュは? アッシュも、好きでいてくれる?」
「……」

あーあ、またアッシュ、黙りこんだ。アッシュはいっつもそうだ。
俺が尋ねても答えてくれない。機嫌がいいときだって、運任せ。
機嫌が悪かったら、確実に返ってこない。今は、機嫌がいい。
どっちだろう。どきどきする。でも、たぶん、

「……俺、も……」
「ちゃんと、言って、よ」
「……俺だって、ちゃんと、好き、だ」
「……うん、ありがと」
「ん……」

ありがとうってキスするときは、アッシュにいいか、って言わなくても怒られない。
なんでかは知らない、知らなくていい。俺たちが同位体でも思考は違うから。
好きだ って気持ち以外、俺とアッシュは一切共有しなくたっていいんだ。
これ以上の共有はいらない。俺たちは最初から共有してるものが、多すぎるから。

「……ア、」












ルクアシュルク。気持ちルクアシュ。