「アーク。……俺たちはルークでもアッシュでもない。アークだよ」 表の精神体は俺だった。利き手は右になった。髪は伸びた。色素も濃くなった。 俺たちが生きるために、ルークとアッシュが一緒になった。ローレライの提案だった。 ずっとずっと三人で過ごしても良かった。アッシュが嫌だと言ったから。 でもローレライが駄目だと言ったから俺が表に入った。アッシュは裏に入った。 だからこうしてみんなと会話をするのは俺だし、ルークもアッシュも俺になる。 そして俺たちはアークになって、二人で一人になるんだ。 「アーク……でしたか」 「なに、ジェイド」 「単刀直入に聞きましょう。あなたは結局、ルークなのですか? アッシュなのですか?」 「俺は、アークだよ」 ルークでもアッシュでもないけど、ルークでもアッシュでもあるんだ。 でもこれは誰も理解してくれない。理解した振りはしても、頭ではわからないんだ。 別に気にしてない。だってローレライの提案だから。ローレライと人間じゃ違い過ぎるんだ。 「あなたを構成する物質はオリジナルのものです」 「じゃあ、そうなんじゃない?」 「ですがあなたの性格はどう考えてもアッシュとは思えません」 「じゃあ、そうなんじゃない?」 みんな勝手に信じればいい。ルークでもアッシュでもいいんだ。ただ、俺たちが一緒なら。 アークとして存在できる限り、俺たちは一緒だ。だからそれで十分なんだ。 「……今日はもういいです。帰りなさい」 「そうか。またな、ジェイド」 「……ええ、また。アーク」 ジェイドは俺たちをアークと呼んでくれる。ジェイドはプライドが高いから。 自分がわからないものが気にくわないんだと、アッシュが教えてくれた。 今分かった振りして、後に分かるんだと。よくわからなかった。でも、なんとなくわかった。 つまりジェイドは、見栄を張ってるだけなんだ。 前の俺だったら、笑ったかもしれない。戸惑ったかもしれない。 でも今の俺は、何なんだろう? 何も思わなかった。じゃあ、なんて思ったの? わからなかった。アッシュも、教えてくれなかった。 「アッシュ、アッシュ、アッシュ、会いたいよ」 俺はアッシュに逢いたくなると、逢わずにはいられなくなった。 それは俺が俺たちになったからだと、ローレライに教わった。 ……アッシュに、逢いたいなぁ。 そうだ、寝よう。夢を見よう。ぐっすりぐっすりと深い眠りに就こう。 夢を見ると、俺たちは逢うことが出来た。楽しかった。二人だけの世界。 ローレライも存在しない、俺たちだけの、特別な。 だから俺もアッシュも、お互いだけしか見えないんだ。
電波。