「おーい、飯だぞ」
「…」
クロコダイルは自分から飯を食べない。というか、食べれない。
片腕がフックになってる所為で、皿を持ったらもう手が塞がるからだ。下品に皿に口をつけて食べることもない。
それを署長に相談したら食わせてやれと言われたから俺が直接食べさせる。本人は嫌がってるが食欲に負けて結局食べる。
「ほい、まずパン。口開けろー」
「…」
おお、今日は素直だ。一回言っただけで口開いた。そんなに腹が空いてたのか?
はむはむと俺の手からパンを食べる姿は本当にペットか何かに見えて面白い。
「スープ飲むか?」
「…ん」
どろっとした不味そうな液体をスプーンですくって口元へ運ぶ。クロコダイルは何も言わない。
クロコダイルは食事中に会話をすることはあまりない。尤も、普段から口を利いてはくれないけど。
食事中は更に口数が少ない。黙って食うか拒むかだけで、基本的に俺が勝手に喋り続けてる。
「ほいパン。にしても相変わらず栄養偏った飯だよなー」
パンとスープと水のみ。パンは固いし、スープはどろどろだし、水は不味い。
どこの監獄もこんなものなんだろうか? 俺はインペルダウンのレベル6しか見たことがないからわからない。
「…、水」
「あいよ。零さないようにな」
水をコップの半分くらい飲んだあたりでもういらないと目で言われる。言葉で言え言葉で。
「…もういい、いらん」
「まだ残ってるけど」
「いらん」
「…あっそう」
残った飯はパンが三分の一、スープが半分、水が半分。今日は食べた方だ。パンが半分以上減ってる。
クロコダイルが残した飯は俺が食べる。だって勿体ないだろ、捨てちゃうんだぜこれ。
「いただきます」
囚人の横に座って囚人の残飯を食べてる俺って、傍から見てすごく変じゃね?
でもクロコダイルは脱獄する気もないようだから扉が開いたまま放っておいても大丈夫だし、
仮に攻撃してきたとしても俺も自然系能力者だから大丈夫。
というわけで、クソ不味い飯も食い終わったし、飯片付けないと。
「ごちそうさま。じゃあな、クロコダイル」
「…」
まだクロコダイルは返事をしてくれない。