今日は宴だ。大きな宝が手に入ったから。 誰も彼も関係ない、みんな好きに飲んで、歌って、やりたい放題。 これこそが海賊というか、海賊らしい宴というか。なんともむさい宴だ。 それを見ながらゆっくり酒をあおっていると、突然がっ! と筋肉質な腕が俺の肩を押さえ込んだ。 「よお! お前、好きな女いるかあ?」 「はあ? なんだよ急に、つーかいてえよ」 「だってよお、お前、女は買わねーし、だからといってそういう話も聞かねーしよお?」 「俺がお前に言う必要があるか? あと離せ」 「いいだろ、そんくらいよー。女はいいぞぉ、柔らかくて優しくてよぉ…」 この酔っ払いめ…。やめろ俺はお前らと違ってか弱いんだ、そんなのっかるな。 一旦酒を置いて絡みついてくる酔っ払いを振り落とす。 がすっといういい音と共に体が軽くなった。 酔っ払いが動かなくなったが気にするものか。ざまあみろ。 「…そういえば、確かにお前女っ気がないよなぁ」 「お前もか、エース」 「なあ、本当にいねえの?」 「いねえよ、女なんて」 つーかこんな男だらけの船でどう女を作れってんだ。 進むばかりで、戻ることなんて滅多にないくせに。 むしろ作る方が女がかわいそうだろ。 「ふーん…あ、じゃあ男か?」 「は?」 …いや、まあ、海賊だし男だろうが関係ないんだろうけど。 まあその通りなんだけど。あっさり言うなお前は。 「つっまんねーなー」 「なんだよそれ…そういうお前はどうなわけ?」 「ん? おれは弟一筋だ!」 「…へいへい」 お熱いこって。相変わらずブラコンだなこいつは。 「本当にいねえのー?」 「あー…ん…まあ、その。べつに、好きな相手がいないわけじゃねえよ」 「おおっ」 適当に片づけても良かったけど。ここは敢えて、アピールするってのも、どうよ? うん、俺かっこいい、ちょうかっこいい。だからくじけるな俺! 頑張れ俺! 今こそ鈍い馬鹿に思い知らせるときじゃー! 「片想いなんだ、俺の」 「へえ…なんか意外だな」 「そうか?」 「ん。なあ、どんな子なんだ? 可愛い?」 よし、釣れた! 「ああ、可愛いぞ。黒髪でな、そばかすが特徴的な気の強い子だ」 「へー」 気付け、馬鹿。どんだけ鈍いんだお前は。 黒髪でそばかすなんて、お前以外知り合いにいねーよ馬鹿。 「どんなところが好きなんだ?」 「ああ? そりゃお前…やっぱ全部、だろ。外見も、中身も、全部ぜんぶ、ぜーんぶ」 「…愛されてんだな、その子」 はやく両想いになれるといいな、とか、お前、は…。 どんだけ可愛いんだばーかばーか! 笑うな! 可愛いだろ! 可愛いついでにいい加減気付いてくれるとすごく嬉しいんだがな! 「…でもな、困ったことにそいつ、ありえないほど鈍いんだぜ」 ああもう、酒よ俺に力を貸してくれ! 持っていた酒を一気に飲みほして、新たに次ぎ直して、また飲み干す。 よし、なんか、一気に、まわってきた、ぞ! 「俺がこんなにアピールしてるのによ…そいつは知らんぷりで…」 「お、おい、? 大丈夫か?」 「エースぅ…」 あ、やべ、頭がぐらぐらしてきた。 酒弱いのに一気飲みなんてすんじゃなかった、やばい、倒れそう。 とりあえずなんか…言って…にぶいこいつに… 「好きなんだ…どうしようも、ない…くらいに…」 だから…
つづく