幸運にも無事名探偵の恋人になれた次の日(どうでもいいが夜は中々眠れなかった)、
まずオレが試みた事は、家事だった。
だってなんか名探偵が家事してるなんて考えられないし、
もしメイドでも雇ってたらと思うと、じっとしてられなかった。
学校が終わると、掃除当番もせずに大ダッシュで工藤邸に向かった。
勿論万一にもそんな無様な姿を見せるわけにはいかないので、快斗のままだ。

余談として、(当たり前だが)工藤邸は最新式の防犯システムが搭載されていた。
普通にピッキングした。

 

チャリと鍵を開ける音と、ガチャリと扉を閉める音がした。
本来の家の主が、帰ってきたんだ!
急いで出迎える。

「あ、おかえりなさい、名探偵!」
「……キッド?」
「はい!」

あ、しまった、また笑っちゃった。
でもなんか名探偵もこういう笑い方も嫌いじゃないようだし、いいかな。
呆けてる名探偵の顔を見つめる。
……うわぁ……今日もかっこいいなぁ……。
睫毛長い。顔綺麗。
やっぱ、名探偵はどんな姿もかっこいい。

「……お前、なにしてんの?」
「お掃除と、洗濯をやっていました」
「…………お前、そんなことできるの?」
「はい……あっ」

しまった。イメージが崩れたんだ!
そうだ確かに怪盗は家事なんてしない!
そんな庶民的な怪盗、名探偵に愛想を尽かされてしまう!!
ど、どうしよう……どうしよう!

「え、えっと……こんな怪盗は、お嫌いですか?」

なんだかとってもいい覚えのある言葉だ。
つい数十時間前に言った気がする。

「いや……そーいうワケじゃないけど」
「本当ですか!? 良かったぁ……」

本当はとっても不安だったんです名探偵になんて言われるか!
嫌われたらどうしようってっ……でも名探偵こういうこと苦手そうだし、
だからメイドとか雇ってたらイヤだなぁと思って……
だ、だから勝手に開けて入ってしまいました、すみません!
で、でも名探偵の部屋とかそういうのには入ってませんから!!

……とマシンガントークをキメたところで、我に返る。
はっと名探偵を見れば、きょとんとしていた。

怪盗は急にマシンガントークは、しない。

脳に固く刻み込んだ。
しかし、我ながらあんな状態で良く素に戻らなかったものだ。
そこは褒めるべき点だとしても、
マシンガントークをキメたことに変わりはなかった。
おずおずと、名探偵の顔を見る。