……言って、しまった。ついに言ってしまった。
もう後戻りはできない。
きょとんとして、目をパチクリしている名探偵の目をじっと見つめる。
ああ、綺麗だな。かっこいいな。

「……付き合うって、お前とオレで?」
「……、はい」

ふーん、と言って名探偵が月を仰いだ。
考えて、くれているのだろうか。

「お前、そんなことで呼んだのか?」
「え……」

――どういう、ことだろう。
それは、少し強引に聞けばどちらともとれた。
もう強引に解釈でもしないと、自分がどうにかなってしまいそうだった。

「別にいいけど……」
「え!」
「そんくらい、普通に呼べばいいのに」

それは。
それは、つまり。
つまり……!

「いいって、ことですか……!?」
「だからそうだって言ってるだろ? 変なヤツ」

変なヤツだと言われてもいい。
OKしてくれた。あの名探偵が。
あの名探偵が、OKしてくれた……!

「や……やった……はは……やった……!!」

思わずオレは、キャラを作るのも忘れて喜んだ。
それに気づいたときには既に遅く、名探偵は驚いている。

「お前もそんな風に笑うんだな」
「え……あ……え、と……こ、こんな私は、お嫌いですか?」

何だかやっと、怪盗キッドらしい言葉を発した気がする。
さっきから情けないばかりで、全く優雅ではなかった。
そうだ、怪盗キッドは優雅なんだから、優雅、優雅、優雅……。
まるで自己催眠。いや、これはきっと自己催眠なんだろう。

「いいや。面白いじゃねぇか。本当にKIDみたいで」

暗に……どころか、完全に子供だと言われた。
でもオレはめげない。だってOKしてもらったんだから。

「……で?」
「え?」
「いつ、どこに付き合えって?」
「……え?」

……まさ、か。
まさかとは、思うけど。
そんな、名探偵とあろう者が、そんなベタな。

「え、と……名探偵……」
「あん?」
「まさかとは思いますが……付き合うって、どういうイミかわかってます……?」
「だから、どっかついて来いっつーんだろ?」

ベッタベタァアアアアアアア!!!
なんて……なんて罪深い男なんだ、工藤新一……!
鈍感にも程がある!