どんっ
「ふあっ」
「おっと、ごめんよ。大丈夫?」
「あ……はい。すみません」
「いいや、いいのさ。ところで君可愛いねー。名前なんてゆーの?」
「えっ? え……えと、です……」
「か! いい名前だねー」
「あ、ありがとうございます……」
「フランスは旅行?」
「あ……はい」
「そっか、此処はいい国だよー」
「……そうですね、素敵ですよね」
「君、わかってるね」
「(いつかフランスさんにも会ってみたいな……
こんなに綺麗な国なんだし、きっとフランスさんも……)」
「……んー、もしかして君、日本人?」
「えっ? なんで……」
「いやー、その曖昧な微笑みが知り合いに似ててな……」
「そ……そうなんですか」
「そうだ! 君もう観光は終わった?」
「いえ、全く……来たばかりで」
「じゃあ俺が案内してやるよ! どう?」
「えっ、でも……そんな、悪いですよ」
「日本人は謙虚だねー。でもお兄さんに甘えなさい」
「え、えっ、ええ?」
「ふふん、日本人が流されやすいのはわかってるんだなー」
「わ、ちょ、う、腕引っ張んないでくださいよ!」











「わあ! 綺麗……!」(どっかイムの観光名所だと思ってください) 「おいおい、こんなのまだまだ序の口だぜ?」 「そうなんですか!? すごい」 「そうかそうか、お兄さん嬉しいなー」 「とっても綺麗です。あ、写真撮ってもいいですか?」 「いいよー」 (日本人って基本綺麗なところは写真撮るよね!) 「……」(ぎゅうっ) 「……ん、あれ? なんですか?」 「いやー……可愛いなって思って」 「はぁ……そうですか (あ、この人いい匂いする……香水? あまいなぁ)」 「イヤ?」 「嫌というか……スキンシップは馴れてないもので」 「へー。君いい匂いするねー。これ花?」(話を聞かない兄ちゃん) 「香水の類はつけてませんが……」 (仄かな花の香りにコロッとやられると聞いて) 「んー」(首筋にぼふーっ) 「わあ! なにするんですか!」 「やー、もっといい匂いするかと思って」 「しません!」 「首弱い?」 「弱くないです早く放してください!」 「じゃあいいじゃん」 「よくないです!!!」
「あーそうだ、ちゃん」 「ちゃんって……男ですよ」 「あ、そうなの? でも大丈夫! 俺男でも美しければ平気だから」 「気にしてください……あと放してください」 「無理。いやーほんといい匂いだね」 「おじさんみたいですよ……」 「お、おじ……!? 違う! 違うぞ! 断じて違う!!!!!」 「……一つアドバイスをするとすれば、必死に否定するのは肯定と見なされますよ」 「!!!!」
「今日はありがとうございました」 「どういたしまして。フランスは気に入ってくれた?」 「はい! また来たいです」 「いつでも大歓迎するよー」 「♪」(日本に自慢する気満々) 「(微笑む兄ちゃん)」 「あ、えと、じゃあ……ありがとうございました」 「ん。また来てな」 「はい。……あ」 「ん?」 「名前、まだ教えてもらってません」 「……あー、そういえば。駄目だなー、知らないお兄さんについていっちゃ」 「じゃあ今日は運が良かったということで」 「ははっ、そうだな」 「それで……あなたの、名前は?」 「俺? そうだな……フランシスとでも呼んでくれ。 日本で言うタロウとかハナコとかみたいなもんだ」 「……なんですかそれ」 「あぁ、だって教えたらつまんないだろ。イチゴイチエ? っての?」 「はあ……一期一会ですか(なんかちがう…)」 「そうそう、だからまた会おうな。そんとき名前、教えるからよ」
「ただいまー」 「おかえりなさい、。フランス観光は如何でしたか?」 「うん、楽しかったよ。親切なお兄さんが案内してくれたんだ」 「ほう、そうですか。きちんとお礼は言いましたか?」 「言ったよーそしたらまた会おうねって」 「そうですかそうですか。もう二度と会わないようにしなさい」 「なんで!?」 「下心が丸見えです」 「そ、うかなぁ? 確かにセクハラはしてきたけど……」 「セクハラ!? それはいけません! 訴えてしまえば良かったんですよ」 「なにアメリカ人みたいなこと言ってんの……」 「だってそうでしょう! セクハラだなんて……不潔です」 「でも綺麗な人だったよ。流石フランス人だね」 「……どんな人だったんです?」 「うーんと、金髪で、肩くらいの髪で、少しだけヒゲ生えてて、真ん中で分けてて……」 「(……ん?)」 「そんで、やけに胸元のボタンが開いてた。あ、あと香水いい匂いだった」 「……ちなみに……その人の名前は……?」 「知らない。今度会ったときに教えるねって。だからフランシス(仮)だって言ってたよ」 「……、やっぱり会うのはやめなさい」 「えー!」 お菊さんは確信したようだ。