「ぷぴー、ぽぺー……むぐぎゅぎゅ」 一体どっからんな寝言出してるんですか、 そんなことを思いながら髪を撫ぜてみる。思ったよりも柔らかい髪質で驚く。 一見ベタベタしていそうだけれどサラサラとしていて、触り心地が良い。 「ん……いも、こ……」 「っ、」 あんたは夢の中まで僕を振りまわしてるんですか、 茶化して言おうとするけれど、その妙に艶のかかった声に口が開かない。 「やめ……んー……くすぐったい、って、」 夢の中でも、僕に髪触られてるんですか? ――それとも、別の人に? 何だかむかついたので、少し髪を引っ張ってみる。 「や……」 「…………ぅ、」 僕は。僕は一体何をしているんだろうか。 こんな僕よりも一回り、下手すると二回りも上のおっさん相手に。 「いもこ……?」 「……、なんですか」 寝ぼけているからなのか、少し気怠げで掠れているその声が憎い。 ちくしょう、おっさんだぞ、おっさん…… 「お前も寝ろ、馬鹿」 「……っ!」 あの細い体のどこからそんな力が出ているのか、がばりと一瞬で布団へ引きずり込まれる。 ていうか……ていうかおっさ……おっさんと同じ布団に……。 これってもしかして傍から見ればものすごく気持ち悪いんじゃなかろうか。 おっさんだぞ、おっさん。一応聖徳太子だぞ。うげぇ。 聖徳太子と一回り年下の五位が同じ布団に……ってモロに寵愛受けてるようにしか見えねぇええええええええ! ち、違う! 断じて違う! 有り得ない!!! そ……そりゃ確かにそういう目で見ている点はあるけど、こ、こんなことは……って何を言ってるんだ僕は! 「むにゃ……ぷべー……」 大体、どうしてこのおっさんは僕の家にいるんだったか。 あぁそうか、急にやってきて泊めろと言いだしたのか。 つまり僕は被害者か。可哀想なのか。 「いもことつなはー……なー……かよしー……」 「だから別にツナは好きじゃないっての……」 一体いつまでその誤解続けるつもりだよ……。 「むぎゅぎゅ……いもこぉー」 ――そういえば、さっきから太子は僕のことばかり言う気がする。 自意識過剰かも知れない。いいや、きっと自意識過剰。 それでも一度そう思ってしまうと、顔の火照りは戻ってくれなかった。 「〜〜っの、おっさんが……」 「……、だいすき……いもこ……」 ……!!! こ、このおっさ……もうこの際ツナが大好きでもいいから、ちゃんと「ツナが」を入れてほしい。 主語を抜かすな主語を! 「……んあ?」 「あ……」 「いもこぉ? なんだお前、まだ起きてたのか……」 「あんたの寝言が煩いんですよ」 「何!? 摂政は寝言なんて言わないぞ!」 「いっぺんお前の寝顔録画したろか」 「いやん」 「キモイ!」 ……僕は何を考えてたんだ。こんなおっさん相手に。 ただうざくて臭いだけの摂政じゃないか。 そうだよ、大体おっさん以前に男同士だろ……。 みんなキモいぜ