「結局ー、ライナはあいつとどんな関係だったわけー?」 パタパタと足を動かしながら、が言った。 ……あいつ? フェリスのことか? まぁ、たぶん、そうなんだろうけど、下手に答えてもアレなので一応聞く。 「あいつって?」 「あーまたそうやって……いかにも俺は悪くない的なー?」 「はあ?」 悪い? 俺が? 一体俺がフェリスのことで何をしたというんだ。 「、まぁいいけど」 「はあ……?」 どうでもいいことなら言わないで欲しい。 一度言われると気になるから。 「あー気持ちいい。お前いい部屋に住んでるねぇ」 「そうか? まぁシオンが用意した部屋だしな……」 ボスンとベッドの中に沈み、うつ伏せになったがチョイチョイと俺を呼んだ。 ……あーあーそういうことしちゃって……俺だからいいけど、シオンとかなら大変だ。 「マッサージして」 「は……え?」 「背中に乗って、肩揉んでって言ってんの」 「お、お前なぁ……」 「なるべく体重はかけんなよ、重いから」 「……、」 こう、「いやいやいやいや」とか「この場面をフェリスに見られたらどうするよ」とか「でもこれってチャンス?」とか、色々と思い浮かぶけど。 もう何も言えないくらいに脱力した俺は、 とりあえず体重をかけないようにの上に乗った。 どうせ逆らっても、結局やらされるんだろうし。 「ここか?」 「んーもうちょい上」 痛くないように、文句を言われないように慎重にマッサージをする。 の背中は思っていたよりも筋肉があって、 少し力を入れただけでは折れてしまうようなか弱い乙女とは言えない要員が、一人増えた気がした。 「あー、そこそこ……きもちいー」 うー、とかあー、とか言いながら気持ち良さそうに目を閉じるを見て、少し呆れた。 俺ってこいつに男と認識されてないんだろうか。 「……っていうかさぁ」 「んー?」 「お前……危機感なさすぎじゃね?」 「あ? なに、あんたに襲えるような度胸あるの?」 「……いや、そういう意味じゃなくてさぁ」 「ふーん」 はいかにも興味ありませんといった顔で、「力が弱い」と文句をつけてくる。 本当に危機感のない女だ。 けど流石にそう思ったのか、が「もういいよ」と俺をどかせた。 俺がどいてすぐ、も起き上がる。 「……なぁ、」 「ん?」 「もしもこんな状態になったら、どうするつもりだったわけ?」 には、突然視点が変わったように見えただろう。 俺の視点も壁とから、ベッドとに変更された。 「どうしてたと思う?」 全く危機感を感じていない、の挑発するような声。 ――俺は男として認識されてない。 改めて、ハンマーでドゴンと撃ち込まれたように頭の中にそんな情報が入り込んだ。 「……っ」 悔しかった。なんとも思われてない、ことが。 気付けばの整った顔が近付いていて、 あぁ俺がキスしようとしてるのか、と客観的に思った。 触れた唇は、冷たかった。 「……ん、で……」 「避けなかったのか、って?」 「っ……」 あぁ、もう、どうしよう? このままじゃ、下手をすれば俺はこいつを殺してしまうかもしれない。 そんでもって、俺はフェリスに殺されるかもしれない。 「うん、なんていうかさ……」