「いいねえいいねえ、忍と忍の忍ぶ恋!」
人の恋路で酒が飲めるお前が羨ましいよ…。
「…べつに忍んじゃいねえよ」
まあ確かに忍んではいない。正直言ってしまえば主公認だ。
でも実際問題、本人に否定されるとなんだか寂しかったりして。結局は俺の片思いかぁ。
哀しきかな人間の性、片想いっていうのは想いが募っていっちまうんだよなぁ。
「お? じゃあ堂々ってことかい? それもいいねえ」
「……駄目だねこりゃ」
そのまま佐助は水を取りに行くと告げて去っていってしまった。
ま、待ってふたりにしないで…! 逃げるの? えっ逃げるの? 前田の相手が面倒だからって!
「――で、実際のところはどうなのよ」
「は?」
「だーから、今出ていったばかりの、佐助との恋さ!」
こいつはそれしか考えないんだろうか。
「…慶次、あのなぁ」
「だってに想い人ができたっていうから来てみりゃ、真田の別嬪忍者なんだからさ」
恋話にばかり興味を持って、マジ、本当、お前女か。女子高生か。図体は無駄にでかい癖して!
お前が実は心が女なんだとか言いだしても俺は疑わないぞ。
なんか髪に刺さってるし。簪とかじゃないよな? そういうのはつけてないよな?
「…まあ、好きだけど」
「おおっ」
「なあ、慶次」
「ん? 俺にできることならいくらでも協力するから、何でも言えって!」
こいつは戦では頼りないが恋においては百人力だ。
まあ、それが実体験なのか聞いた話なのかは知らないというか興味もないが。
「…佐助はさ、俺のことを覚えてないんだ」
「うん?」
「――昔会ったことがあった。たった一度、一日だけ」
「それを佐助が覚えてない、ってこと?」
「…、まあ」




















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佐助は遠くでも聞いてそうで怖い