ああああごめんごめんよギルさあああん
絶対これ俺の所為だ、あのまま迷わせてしまえばよかったんだああああ
あああああ今日を境にギルさんが目覚めちゃったらどうしよう! 俺どうすれば!!
「…あいつはなんで転がってるんだ?」
「いえいえお気になさらず。彼の持病です」
なんだ持病って! お前の所為だろ馬鹿菊!
「持病は持病でしょう。あ、今お茶用意しますね」
「おう」
え、ちょっと待て二人にするな!
俺はどんな顔をしてこの人と顔を合わせていればいいんだ!
「置いていくなよぉお…!」
「ごゆっくり」
「…」
「菊ぅううう!! 待て菊! ちょっと! おい! って開かな…衝立でもしてあんのかコレ!?」
「……」
「ちょ! おい! 菊! おい菊ってば!!」
「………ぶっ」
「あ?」
突然の俺以外の音に振り向けばギルさんが大爆笑してた。
な、なんだそれ! 俺が叫んでいる間に何が起きた!
そんなに面白いことがあったのか!?
「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!!!」
変な笑い方だ…。
「お、お前、面白いな…ぶくくっ」
「そ…そんなに笑わないでくださいよ」
「ひー、くるし…」
く、苦しくなるほど笑われた…だと…!?
そんな屈辱、始めてだ! 俺傷ついちゃう!
「はぁ…久々にこんな大笑いした気がするぜ」
「そ、そうですか…」
「…」
戸惑いもあるけど一応返事。ここら辺はちゃんと教育されてるんだぞ!
俺えらい! 両親に感謝状! もういないけど! 天国から見ててくれてるかな。
とかなんとか思ってたら、突然じっと見つめられた。ちょ…イケメンこっち見んな。
「…な、なにか」
「お前、その敬語やめろ」
「は?」
「に…、本田と俺は同じだ」
「同じって」
同じじゃないだろ、どう考えても…。菊日本人だし。
それとも地位的なもの? いや、菊はニートだから違うな…え、ひょっとしてギルさんもニート?
もったいない、ならホストでもやればいいのに。儲かるのにな。
俺みたいな残念な顔でもバイトくらいはできるからギルさんがやりゃきっとトップだ。
「仕事はするべきですよ」
「俺たちは水平的な…は?」
「ギルさん綺麗な色だから、きっと一瞬でトップです」
「だから敬語とかさんとか」
「ニートはいけませんニートは」
なんならいいクラブ教えるんで頑張ってみてください。
「に、にーと…」
ふぅ…これで路頭に迷いつつある若者を一人救った気がするぞ!
ついでに菊の毒牙からも守ってやりたいんだが残念ながらそれは無理そうだ…。
「…なぁ、にーとってなんだ」
「え?」
「今俺本田に日本語教わってんだ。だからまだ詳しい単語とか知らないんだよな」
「…そうだったんですか」
知らなかった…そうか、菊はこれをネタにギルさんを招待したのか。
「ええと…ニートっていうのは、仕事をしていない人のことで」
「は?」
「つまり、無職の人のことです」
「…俺はニートじゃねえ」
「えっ」
マジで!? え、だとしても今日は平日なんだけど…。
会社は…ていうか何の仕事してるんだろう。
「大体、本田だって違うだろ」
「え? 菊はニートだろ?」
「…本人が言ったのか?」
「いや…でも仕事してないですよ」
敢えて言うなら同人誌描いてるのが仕事だけどそれも大体コミケ前だけだ。
いやあれは職業とはいわない。限りなくそれに近い趣味だ。
「私がなんですって?」
「うげ、菊」
「黙って聞いてれば人のことをニートニートと…」
「だって本当だろ」
「違います」
なんだよ二人の時は否定しないくせに! 人前だから見栄張ってんのか!
じじいのくせになんて生意気なんだ!
「どうぞ、ギルベルトさん。緑茶ですけど」
「おお、緑茶! これうめーよな」
「それは光栄です。もいりますか」
「…いる」
くそう、狸じじいめ。なんて露骨な話題の逸らし方なんだ。
でも悔しいことにじじいの緑茶は超美味い。じじいだからか。
菊って緑茶以外あんまり飲まないしな…。
「…そうだ、ギルベルトさん。今日のことなんですが、折角ですし、に習ったらどうですか」
「は?」
「お、いいなそれ。やっぱ語学ってのは多数から教わる方がいいよな!」
「え、ちょ」
「でしょう? ということで零夜、教えてあげてください」
「はあ!?」
ちょっと待て! 俺人に教えられるほど日本語が得意ってわけじゃ…
つーかあんたは教えるのが面倒なだけだろ!?
「教えることも勉強ですしね」
「いやいやいや俺国語得意じゃねーし!」
「母国語なんですから」
なーにがボコクゴナンデスカラーだよ! ふっざけんな!
ニコニコニコニコ笑いやがって…! 笑顔の裏が読めるんだよ!
面白いネタ発見みたいな笑い方すんな!
「それに、汚い言葉は私よりの方が知ってるでしょう?」
汚 い っ て な ん だ。
せめて乱暴って言えよ×××!
「じじいのくせに…」
「…引き受けてくれるそうですよ、ギルベルトさん」
「おお、マジか! マジダンケ!」
兎にそう笑ってもらえるなら…悪い気はしないけど。
「ダンケって?」
「ギルベルトさんはドイツ人なんです」
「へえ」
「ドイツ語でありがとうって意味だ!」
「そうなんですか」