ティキと別れてすぐ、俺は教団に帰った。 時間は少し早かったけど、まぁ速いにこしたことはないだろう。 教団の中がいつもより騒がしいのは、ホームが引っ越しをするからだろうか。 慌ただしく動く人ごみの中、見なれた頭を見かけた。 ピョコピョコと動いていて、なんだかいつもより可愛らしい。 「ラービ」 「あ」 もう帰って来たんさ? とラビが駆け寄ってくる。可愛い。 「ただいま」 「おかえり!」 ラビの笑顔に癒される。 ティキはティキでイイけど、ラビもやっぱりイイ。 ラビの脇の下に手を入れ、抱きあげる。 「ところでどしたの、それ」 「それ?」 「ラビ、小さい」 「あ……うん、科学班の引っ越し、手伝ってたんさ」 「へぇ。あそこヘンなのばっかだもんね」 カワイイね、と言えばラビは顔を赤くして暴れた。 仕方がないので降ろす。ティキだったら殴ってるけど、ラビは可愛いなぁ。 「男に可愛いなんて、言うもんじゃないさ」 「だって、実際カワイイじゃない。小さいラビ」 くすくすと笑ってラビを撫でる。うん、手触りサイコー。 いつものラビの感触だ。しっかし小さくてもホント可愛いなぁ。 「まぁ大きくても可愛いけどね」 「もう……はいっつもそうさ」 「ラビが可愛いのがイケナイ」 顔を赤らめるトコとか、本当可愛いんだから。 うん、今度ティキに惚気よう。 ホントはティキのことも惚気たいけど、残念ながら惚気られる人がいない。 ラビの可愛さ、ティキのエロさ、どっちも惚気たいのになー。 「そうだラビ、鉄槌直った?」 「まだ。みんな忙しいんさ。ユウもまだなんよ」 「ふぅん」 まぁ、二人とも基本的に体術も出来るし、平気かな。 ラビが夢の中で戦う姿は、どこか美しさもあった程だ。 ロードが「トクベツだよ」と見せてくれたアレは、数日経った今も鮮やかに覚えている。 「はやく直るといいね」 「そうさね」 早く直ってくれなきゃ、俺もラビの槌使えないもんな。神田の六幻も。 欠片でもなんとかなるけど、細部はどうしても俺の記憶に頼ってしまう。威力も落ちる。 最大限の威力を出すには、やっぱり形が定まっている方が良い。 ま……所詮はどんなに可愛くても、武器がないんじゃ意味がナイってことかな。 「……」 「なぁに、ラビ」 「あの……さ……?」 なんだかシュンとしているラビが、可愛い。 「怒って、る?」 「なにを?」 「その……この間の」 「この間?」 どの間だろう。全く思いつかない。 でもラビが可愛いから許す。なにを? 「オレが、暴走したとき」 「あぁ……」 ロードに喰われて、ディックが出たときか。 うん、あの時はちょっとムカついた。 結末は知っていたとはいえ、いざ対面するとまた別の想いが浮かぶものだ。 「オ、オレ……その、あんとき、色々、言ったみたいで……」 「……そっち?」 「へ?」 「自殺しようとしたことかと思った」 火加減なしに火判をぶっぱなって、 もし結末が変わってしまったら、もしアレンが助けられなかったら、 そう思ってハラハラした。けれど俺は助けなかった。 ティキも、ロードも、居たんだから。 「あ、あれは……」 「あんまり驚いて、動けなかったくらいだよ」 「ご……ごめん」 まぁ、それはウソだけど。 ホントは動けた。ティキを見ていた。ラビを見ていた。 心の中で笑いながら、二人を見ていた。 どちらかが死んでしまったら、どうしようかなと。 「アレンがいなかったら、ラビ、どうなってた?」 「……うん……」 シュンとしていて、今のラビに耳があったら相当可愛いだろう。 きっと萎れてるに違いない。反省してるんだなぁ。カワイイ。 「ごめんな、」 きっとラビは今、もの凄く後悔しているのだろう。 助かったとはいえ死のうとした。そのことに。 可愛いなぁ、ラビは。ティキとはまた違う可愛さに、俺はもうクラクラだ。 「……もういいよ、ラビ。俺は――」 「ラビー! サボってないでお前も動けー!」 「あ……」 なんてタイミングの良い。 何だか興ざめだ。ティキ風に言うならば、シラけた。 「……じゃあ俺、一旦部屋戻るね。引っ越し頑張って」 「あ、うん……じゃあ、またあとで」 「ん」 小さな背格好のラビを見送るのも、新鮮で面白かった。 さっきシラけたばかりだというのに、早速気分の上がる俺は単純だな。