ぶくぶくと泡を立てている、淡い紫の色をした液体。 フラスコに入っているそれは、綺麗な色合いだけど人の飲める色はしてない。 「ふっふっふっふ……」 「今度は何を企んでるんですか、室長」 「企むなんて失礼な! これは歴とした研究の成果さ!」 コムイの研究の成果に良いことなんてないと思う。 「嘘さ……絶対まともなモンじゃねぇよあれ」 「失礼な! これはだね、飲んだ人が最初に見た人物に忠誠を誓う薬だ!」 「忠誠ぃ?」 「やっぱり、ロクなもんじゃねーじゃん」 うげぇ、飲みたくない。 今の内に逃げておこうかな……なんだか嫌な予感が。 「まぁ正確には忠誠というか、言うことを聞くだけ何だけど」 「どの道変な薬ってことには変わりないさ」 「兄さん、何がしたいの?」 ラビの言う通り。 さっさと没収すべきだね。 「という訳でくん、飲んでくれる?」 「何がというワケなのかわからないし、どうして俺なのかもワカラナイナー」 「いいじゃない。この際、最初に見る相手は選ばせてあげるからさ!」 余計に意味がわからない。 アンタ自分の言うことを聞く人が欲しいんじゃないの? 大体みんなも反対す…… 「、飲んだらまずはオレを見るさ!」 ふざけんな。 「ラビ……なに言ってんだお前……」 「意味わかんないんだけど……なに、ラビって俺のことそんな風に見てたワケ?」 「え、や、別にそーいう訳じゃ」 「だってそういうコトでしょ、それって」 ラビに素直に従ってる自分……あ、キモチワルイな、それ。 逆なら自然なのに。 「まぁまぁ、いいじゃない。誰を見てもいいからさぁ、飲んでよ」 「どうして俺が」 「君が一番効果がわかりやすいかなって。それに研究の成果、見たいし」 「……」 研究の成果、ねぇ。 どうぞと手渡されたフラスコを見る。 鼻を近づけたら下手をすれば鼻が潰れるかもしれない……。 とりあえず手で香りを仰ぐ。 「そんな有害な臭いはしないって……」 「嘘言うなってコムイ、本当は激臭なんだろ?」 「……あ、ホントだ、良いニオイ」 「嘘ぉ!?」 「そんな色してるのに?」 なんだろう。ハーブ? 爽やかなニオイだ。 これなら、飲んでも……イイかな? 「……いいよ。飲んでも」 「えっ、ホント!?」 「うん。とりあえず、目は瞑っておく」 まぁ、偶には尽くすというのも、悪くはないだろう。 勇気を持って口元へフラスコを持っていく。 せめてビーカーにして欲しかったな、なーんて思ったりして。 「んっ……マズイなコレ……」 どのくらい飲めばイイんだろう? わかんないから飲み干すしかないカナぁ。 「ど……どう? どんな感じ?」 「んー……苦い。だけ」 「そ、そんだけ? 苦しいとかないさ?」 「ヘーキ……」 さて。どうしようかな……目、開けたくなくなってきた。 飲んだ後から言ったって遅いけど……。 ええい男は度胸! 目を開け俺ー! 「でーい! 目の前は誰じゃー!!!!」 「うわぁ!? 急に目を開けないでさーっ!」 目の前にいたのは―― ラビ!? 「……ラビ……」 「えっ…………?」 「ラビ……」 「えっと……あの」 「なんて可愛いんだ……っっっ!!」 「は……?」 なんて可愛いんだラビ! 前からカワイイカワイイとは思っていたけど、 ここまでカワイイだなんて! 「えと…………さん……?」 「、どうした?」 「大丈夫?」 「あれぇ……? おかしいなぁ」 あぁラビ、可愛いラビ! 不思議だね何だか君が輝いて見えてきたよ! 「ラビ、ラビ、ラビ!」 「な……えぇ……? コ、コムイ、一体何が起こってるんさ……!?」 「うーん、おかしいなぁ」 おかしい? いいやオカシクなんかないさ! あぁラビ……可愛いね、ラビ……素敵だよラビ! 「明らかに効果が違うじゃないですか、室長!」 「そうよ兄さん、これじゃまるで――」 「惚れ薬みたいさ」 「そうか!」 「なんかわかったんさ!?」 驚いたラビもカワイイなぁ。 「惚れ薬なんだよ、これ!」 「はぁあああ!?」 「じゃ……じゃあくんは、ラビを好きになっちゃったってこと……?」 ラビはカワイイなぁ。横に居るリナリーなんて目じゃないよ! オンナノコよりもカワイイってどういうコトなの? スゴイねラビ! カワイイよラビ! 「ラビ」 「ひっ、え、あ、な……なんさ?」 「ひとつ聞いてもイイ?」 「う……うん?」 「ラビってどうしてそんなにカワイイの?」 「……はい……?」 うーん、オンナノコよりもカワイイその秘訣は? やっぱり仕草? それとも性格? 脅えてるトコロとかもの凄くカワイイんだよねぇ。 あと、泣き顔もカワイイ。サイコーだね。 「ラビ、俺のために泣き喚いてくれない?」 「は……え? ごめんもう一回言って」 「泣いて」 はぁぁああああ? あぁラビ、そんな声もまたステキだよ。 けど少しバカみたいだからよした方がイイかもね、俺以外の前では。 「くん、あの、少し落ち着いて……」 「リナリーもラビが好き?」 「え?」 「だから止める? それとも気持ち悪いの?」 うーん、リナリーもラビが好きだったらどーしようねぇ? やっぱりなんだかんだいっても彼女は公式的なヒロインだし、 なんだかラビもリナリーが気になってそうだそ、困るなぁそれは。 どうしようかな。 「あ、あのねくん。兄さんにすぐ解毒剤作ってもらうから、だから」 「ラビはあげない」 「あ、えっと、うん、ラビはくんのものでいいから」 「ちょ……リナリー!?」 「ラビは黙ってて! だからね、その、ラビと二人で大人しくしててくれる……?」 ……ん……リナリーはラビのコトどーでもイイのかな? なんか素っ気ないカンジ? 二人で大人しくかぁ、二人……うん? 「ふたり?」 「そう、二人」 「二人きり?」 「そう、二人きり」 「わかった、大人しくする」 「ありがとう」 「ちょっとぉおおおおお!?」 本人の意思は? オレの気持ちはー!? うーんなんだか聞こえるけど聞こえないなぁ。 なんて言ってるんだろう、ラビ? 気になるけど、二人きりならまぁまた聞けるでしょ。