「ちくしょー…」
夕暮れに包まれた教室、二人だけの放課後。
これだけならそれなりにロマンチックな雰囲気がするけど、
残念ながら二人きりになってるのは男二人だ。
「懲りないな、お前」
「うっせー」
机に突っ伏して項垂れているのはギル。俺の絶賛片思い中のノンケだ。
鈍感な上に、一人の女の子をずっと想い続けてる。振られてるのに。
しかもその子は彼氏持ちだってのにギルは諦めない。
俺はギルが諦めるまで出番なしってことだ。寂しいなぁチクショー。
「なあ、なんでそんなにその女のこと好きなわけ?」
「…仕方ねーだろ、好きなんだからよ」
「弟の方が優先順位の高い好きな女ねえ」
「なんだよ」
「べつに」
ギルはブラコンだ。好きな女<弟だ。俺はヒエラルキーにすら含まれていない。
あれ、なんかしょっぱい液体が目から流れてきたぞ。わあしょっぱーい
「で、お前いつその子諦めんの?」
「諦めねーよ」
「だってその子彼氏持ちだろ?」
「うるせー」
ああはいはい、つまり俺にお前を落とせる隙間はないってことだろ、わかってるって。
でも俺だって諦めないぞ。とりあえず友達というポジションだけでもお願いします。
…寂しいから兎でも飼おうかな。
「はぁ…誰か俺のこと慰めてくんねーかなぁ。ひとり楽しすぎるぜ」
「俺がいんだろ?」
「男じゃねーか」
ぐしゃりと頭を撫でつけられた。ちくしょう、俺より背が高いからって。
足の長さもお前より短けりゃ座高だって低いよばーか! ばーか!
「お前も長いこと彼女いねーよな。別に俺に気とか使わなくたっていいんだぜ?」
使ってねーよ。気付けよばか。
「べつに…」
「お前顔は良いんだから、勿体ねーぞ。学生のうちに楽しいことしとこーぜ」
「お前が俺のこともらってくれりゃ万々歳なんだけど」
「は?」
ギルの瞳が少し大きくなる。あ、綺麗。夕日に反射して輝いてる。
良く見れば銀色の髪にも夕日が反射して、橙色になっている。
なんかこいつ、すっげえ綺麗なんだけど。ムカつく。ギルのくせに。
「せめて意識くらいはしてくれ」
「…は? いや…、え?」
「ギルベルトの鈍感」
なんか恥ずかしい。よし逃げよう。即座に立って扉へ直行。
俺のが廊下側に近かったから捕まらなかった。
ギルの中途半端に伸びた腕と、反射した夕日が眩しかった。
あ、ギル追ってきて、る。なんだよ、期待するからやめろよな。
「お、おい! 待てよ!」
「誰が待つか」
お前には愛しのあの子がいるんだろ、名前は忘れたけどさ。
「せめてどういう意味か言ってけ!」
「誰が言うか」
お前まだちゃんと気付いてないの? どんだけ鈍感なんだよ。
さすがギルだな。鈍感すギルぜ。あ、ギル語うつった。
「おい…!」

「知りたりゃついてくれば!」


まあ、帰宅部のお前が陸上部の俺に追いつけるかどうかはわからんがな!













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主→プ→おんなのこ←→だれか