「そういえば……」
エレフが思い立ったように口を開いた。
「お前はどうして髪を伸ばしているんだ?」
そういうお前こそどうして伸ばしているんだ? と訊き返そうとして、やめる。
質問に質問を返すのは、あまり良くないだろう。それにエレフがキレる。
髪を伸ばしていた理由、か。
「……義兄上が、綺麗だと言ってくれたから」
「あにうえ? 他にも兄弟がいたのか」
「異母兄弟なんだ。義理の、兄上。だからあまり良い目では見てくれなかった」
最もそれは、当たり前なのだろうけど。
義兄上は妾腹だと幼い時分より罵られ続けていたのだから。
「その義兄上が、唯一褒めてくれたのがこの髪だった」
「……ふーん……そのアニウエってのは、生きてんの?」
「いや……私が、殺した」
私にしては直接的過ぎたか。エレフが驚いている。
それもそうだろう、義理とはいえ私は実の兄を殺めているのだから。
「なら会えるじゃん。会いに行こうぜ」
「……は?」
会える? エレフ、話を聞いていたのか?
義兄上は既に亡くなっているのだと――あ、
「ここは冥府なんだ。死者なら誰しもここに存在するんだから」
「……まぁ会えることは会えるだろうが……」
死者は幾万と居る。それこそ、全国の死者が集まっている。
その中から一人義兄上を見つけるなど、砂漠で落とした宝石を探すようなものだ。
見つかるはずがない。あちらもこちらを探しているというのなら、また確率は違うが。
「なに面倒なこと考えてんだ? こっちにはタナトスがいるんだぞ」
「タナトス?」
「冥王だぞ、冥王。人探しくらい簡単だろ。俺達だってすぐに会えた」
「あ……」
そうか、そういえばそうだった。
私がこちらに来た時も、あの長身の男に連れられてみんなに会ったんだ。
「探そうぜ、そのアニウエをさ。死んでまで昔みたいなくだらねー茶番することはないんだから」
「エレフ……」
「感謝しろよ、馬鹿兄貴。俺が人の恋路を応援するなんて珍しいぞ」
エレフが私のことを兄と呼んでくれた……!
嬉しい、嬉しすぎる。
嬉しすぎて何か聞き捨てならないような言葉を
聞いた気がしたのに忘れてしまった。







スコレオ萌え。正しくはスコ←レオ萌え。