「あっつーい……」

ミンミンミンミン。
セミが、鳴く。
去年まではセミなんて存在しない、静かな空間だったのに。
黄昏がセミの存在を知ったからだろうか。

「どぉしてこんなにあついのぉ〜……」

リーン、リーン、
風鈴が、鳴る。
去年までは風鈴さえ存在しない空間だったのに。
黄昏が風鈴の存在を知ったからだろうか。

「……夏、だからだろ」

あぁ、

「むぅぅ〜……僕、冬だもぉん……」

どうして

「俺だって冬だ」

セミも風鈴もあるのに、どうして

「じゃあ何でそんなに涼しそうな顔してるのーっ」

冷房器具が一切存在しないんだッッ!!

「俺だって暑いんだ」

暑い。
暑すぎる。
なんだこの暑さは。
地球温暖化どころじゃないぞこれは。
なんだこの暑さ。
大体ここは地球じゃなくて生と死の挟間だぞ?
常に空気は冷えて快適温度だったじゃないか!
自分の服がもこもことしているものだというのを呪いたい。
誰だ俺たちを冬の天秤にしたのは。
なんだこの分厚い生地のコートは!

「うっそだぁ、だって夜、汗かいてないじゃん……」
「暑すぎて困ってるくらいだ」
「むむぅ……えいっ」
「!?」

朝が、この暑い暑い暑い暑い暑い中、抱きついてきた。
馬鹿かお前は、暑いんだろ、暑いんだろ!?
暑いならくっつくな阿呆離せ!

「わーつめたーい……きもちいー……」
「ばっ、こら、離せ暑い! なんでお前こんなに体温高いんだよ! 子供か!」
「夜が冷たいのー」

朝は体温が高い。
それに反して、俺は体温が低い。
これも反属性としての性なのか、それともただ低血圧と高血圧の違いなのか。
こればかりは俺自身で判断することは不可能だった。

「あー、気持ちいい……」
「……っ……こ、らっ! 離れろ……!」
「やぁー」
「や、じゃない馬鹿、俺はお前の暑さで死にそうだ!」
「僕も僕の体温で死にそう」
「勝手に死んでろ!」
「僕は生きてなくちゃいけないのー」
「阿呆、俺は夜で死だが感覚まで死んでるわけじゃないんだっつの!」

肉体は存在しないけれど、感覚は常に研ぎ澄まされてるんだ馬鹿!
大体、身体の仕組みはお前と俺、ほぼ同じだろうが!

「うーん、どうしてこんなに違うんだろうね」
「知るか!」
「やっぱり僕たちが反属性だから? もーっ暑くてわかんなーい」
「暑くかろうが寒かろうがお前の低能な考えなんぞ知れとるっつの!」
「あっ酷い。そんなこと言うような人は……こうだーっ!」
「だぁぁああああああ」

暑い!!
暑い暑い暑い暑すぎる、一体どうなってるんだ!?
高温の朝はぎゅうぎゅうとくっついてるし太陽はかんかん照りだし有り得ない!
一体黄昏は、何を、考えてるんだッ!







あぁ早く夏よ過ぎ去れ!







暑いですね。