「……なあ、オルフ」 「はい」 「願掛けか何かかと思って今まで黙っていたんだが……」 「はい」 ゆっくりと手を伸ばしてオルフの前髪をあげれば、 白く肌理細やかな肌と初めて見る綺麗な瞳が見えた。 なんだ、隠しているからどんな酷い顔なのかと思えば、 綺麗な顔をしているじゃないか。勿体ない。 「っえ、ぁ、あの、か……か、っか……っ?」 「これ、長すぎじゃないか? あまり長いと目を悪くするぞ。 せめて分けるとか……って、聞いてるのかオルフ。オルーフ?」 駄目だ聞いてない。きちんとした名前で呼べば反応するだろうか。 ……いや、待て。こいつの名前は何といったか。 これでは少し長いのでと最初から愛称で呼ばされていた所為か、思い出せない。 確か……なんとかウス……だったか。オルフウス? 何か足りないな。 オルフ……オルフ……オル……そうだ! 「オルフェウス?」 「ッは、はい!!!!!!!」 合っていたようだ。しかしなんだ、その反応は。 言葉もそうだが、前髪を上げたことで見えている瞳の動きで動揺が丸見えだ。 「あ、や、えと、な……なんでしょう?」 無理に微笑んでいるのか何だか知らないが、困っているのは確かだろう。 困っているとわかっていてやめない自分はSなのだろうか。 「……なんだか顔が赤いな。熱でもあるか?」 「っふ、ふえええぇ……ぁっの! い、いえ、ね、つ、だなん……て!」 赤くなったり、青くなったり、面白い。 これからはきちんと表情が見えるようにしてもらおうか。 きっと、私が言えば戸惑っても従順に従うだろう。 「か……かっか?」 「ん?」 「あ……あの……お、お手を……」 「あぁ……嫌か?」 「うぇ!? い、いえ、その、嫌とか、そういうのでは……」 ふむ。さてこの状況、どうするか。 そろそろ周りの兵の視線が気になってきたな。 「オルフ」 「っは、はい」 「これからはきちんと前髪を分けるように」 「ぇ、あ……は、はい」 さて、一体どんな風に分けてくるのか、楽しみだな。
この日を境にオルフさんは前髪を分けて目が出てきました。 周囲の兵は首を傾げ、将軍はニヤニヤ笑ってました。