の本音が聞きたくて、酒で酔わせた。
…酔わせたはいいけどは思ったよりも酒に弱かったらしく、
本音どころかすぐに酔い潰れた上にぶっ倒れてしまった。ちくしょう俺様の計画が。
「ちょっと、ほら、きちんと布団に入って」
「んー…」
なんだか旦那みたいだ。旦那もときどき酔い潰れて、俺が介抱することがあった。
最近は酒に馴れたのかそんなことはめっぽうなくなったけども。
「全く、弱いなら先に言ってよ」
飲ませている最中に何度か弱く言っていた気もしたがあれでは主張が小さすぎる。
言いたいことは大きく言ってもらわねばわからない。大体、は俺に弱すぎるんだ。
一体俺のどこに遠慮してるんだから知らないけど、時々は不自然なほど俺に優しい。
「……さすけ…」
「な、…なに」
酒で掠れたその声は、の口からは聞いたことのないほど低いものだった。
「さすけ…」
「なに…」
「さす、け」
「うん…」
「佐助」
「う、うん」
「佐助」
「な、なにって言って」
ぱたん、とは布団に沈みこんだ。…力が尽きたらしい。
……俺様ってすごい不憫なんじゃないかな。
「全くもう」
結局収穫はなし、かぁ。優秀な忍と言われたって、想い人の本音一つ聞けないんじゃ意味がない。
あーあ、これが仕事なら楽勝なのになあ。適当に酔わせて、適当に吐かすのに。
相手がだもんなぁ…仮にも武田の忍だし…。
……もういいや。寝よう。
「……あれ…ちょっと…」
部屋に戻ろうと立とうとした瞬間、ぐいと着物を引っ張られた。
が寝惚けながら掴んでいるらしい。しかも変なところを掴んでいて、たぶんこのまま引っ張ったら脱げる。
…別に着物が脱げたって構いやしないけど…もしが起きたら……
「…もう」
仕方ない、が手を離すまでここにいよう。



*-*-*



「…佐助、?」
「あ、起きた?」
起きたならその手を放して欲しい。
そろそろ俺様も眠いというか…さすがに非番の日くらいはぐっすり寝たい。
「なんでここに…」
「あんたがこの手を離さないからでしょ」
「あ、…ごめん」
「わかったから、離して」
「…………やだ」
「は?」
駄目だ、きっとまだ酔ってるに違いない。これだから酔っぱらいは嫌なんだ。
「佐助」
「な、なに」
「明日は目玉焼きが食べたい」
「…あっそ」
「作ってくれる?」
「わかったよ」
「ありがとう、愛してるよ佐助」
「…」
なんだその安い愛は。酔えば誰にでも言うのか。
苛々する。だから嫌なんだ、酔っぱらいは。口が軽くて、信用できない。
「佐助、好きだ…」
「な、にそれ。酔った勢い?」
「違う、もっと前から」
もっと前、なんて。どのくらい前のことなの?
それって俺よりも前? 後?
「…ねえ、いつから俺のこと好きなの」
「ずっとずっと、前」
「それって、いつ」
俺と初めてあったとき? 共に戦をしたとき? それとも、もっと、
「ずっと、ずっと前だ…俺がこの世界に取り残される前から…」
「…それって、」
いわゆる、あれか。「お前と出会う前からお前のことが好きだったんだ」っていう…。
…全く、やっぱり酒なんて飲ませるんじゃなかった。
があんな日記を書くからいけないんだ。あんなので、俺を喜ばせるから…。
「最初に会ったのが、お前で良かった」
「って、、ちょっと、寝るなら手を離してから…」
「お前も此処で寝ればいいだろ…」
「あのねえ、」
どうせ起きてから騒ぐのはあんたでしょ、と言ってもは手を離さなかった。
…もう知らない。明日起きた時に叫んだら殴ってやる。文句言われたって知るものか。
日記だってこれから毎日読んでやる。忍頭を舐めるもんじゃない。
とりあえず、明日叫んだらおやつ抜き。








「う、あああああああああああああああああ!?」

ほら、やっぱり。おやつ抜きだね、