はいつも俺に「好き」だの「愛してる」だのと言うけど、
それは嘘なんじゃないかと、時々思う。
だってそうやって言葉に出すことはしても、絶対に行動には移さないんだ。
口付けを強請ってくることもなければ、抱擁を求めるわけでもない。
ただ俺の作る料理を美味しそうに食べて、働いて、また食べるだけだ。

…ひょっとして好きとか愛してるとか、俺様の料理だけ?

「ねえ、」
「んー」
「美味しい?」
「おう、美味いぞ。さすが俺の佐助!」

の美味しいと言ってくれるときの笑顔が嬉しくて気にしてなかったけど、
これはひょっとして、怒ってもいいところなんじゃないだろうか。
「俺と料理と、どっちが好きなの!」
…なんて問い詰めて料理と即答された日には立ち直れないので、言わないことにした。
まあ、が俺の料理に夢中になってる間になんとかしないとなぁ。
いっそ何か仕掛けてみようか。
相手に告白されているのにこんなに苦労するだなんて、馬鹿みたいだけれど。

「佐助の飯は本当、上手いよなー」
「はいはい。おかわりは?」
「食う!」

相変わらず食欲旺盛だなぁ。これで何杯目だっけ? 3? 4?
専用のお茶碗に大盛りにご飯を盛りつけて、熱いからねと渡した。
けれどもは速攻でご飯をかきこんで、「熱ッ! あっつ!」などと騒いでいた。ばかだ。

「あつひ…」
「もう、馬鹿だなぁ。だから熱いって言ったのに」
「だって、熱いうちに食べなさいって」
「誰がそんなこと言ったの」

旦那だろうか。いやさすがの旦那もそんな馬鹿なこと…言いそう。
あれだけ熱いんだから熱いものも平気そうだ。というか、平気だ。あの人は。
出来たて餡子だって一気に口に放り込む人なんだから。






「こじゅが」






なんだって?

「…ごめんもう一回言って」
「小十郎が言ってた。冷めないうちにかきこみなさい、って」
「………俺様以外にも、料理作ってもらってるの…?」

嘘だって言ってよ、俺の料理美味しいって、言ってくれたじゃんか。
いつだっていつだって、美味しいって、

「え、あっ…ち、ちげーよ? あの、それは、」

必死に誤魔化そうとしているけど、声は裏返っている。
…ばかみたいだ。
の言葉に勝手にひとりで盛り上がって、勝手に自惚れて。
ひょっとしていつもが俺の言葉をスルーするのは本命じゃないからだったんだろうか。

「こッ、此処に勤める前の話で…!」
「……え?」
「その、ほら。俺まともな飯食べれてなかったから、偶に小十郎が憐れんで恵んでくれて」

ここにつとめるまえ…?
そういえば前は時々仕事はないかと遊びに来て、食べ物を漁って帰ることが多かった気がする。
…それと同じように、伊達の元にも行っていたのか。

「だ…だから、俺べつに、浮気とか、してな」
「はさあ」
「な…、なに?」
「右目の旦那と俺、どっちのが好きなの」

いっそこれで伝わればいい、これでこのもどかしい関係が終わってしまえば。
こんな誤解もなく、思わず刺し殺してしまおうだなんて思いもしなかったのに。

「え…」
「どうなの」
「そ、そりゃ…佐助に決まって…」
「ほんとうに?」
「う…うん」

…よかった。今ここでに「小十郎」だなんて言われたら、次の戦は修羅場だった。
でも次伊達軍と戦うことがあれば、片倉小十郎は半殺しにしよう。
の友人だから半殺しだ。が良いと言うなら殺すけど、無理だろうから。

「小十郎は、いつも決まったものばかりだったし」
「…そうなんだ、」
「佐助はいろんなもん作れるもんな」
「まあ、俺様器用だから」

実はのために日々精進しているだなんて、
には知られたくない事実だ。

「しかし、こんだけ美味くても佐助も不安なんだなぁ」
「…は?」

不安って、なんだ。いや不安は不安だったけど。
美味い? 美味い=不安? …は?

「心配しなくても、」




「佐助の方が、小十郎よりも美味しいよ」




ま た す れ 違 い か !