そこは冥闇だった。 冥くて、冥くて、冥くて。とても寂しくて。 周りには妙に蒼白い人と、骨のような……仮面(だと思いたい)を被った死神のような人。 正常な人は誰もいなかった。其処は冥かった。其処は寂しかった。 「――何故生者が此処に?」 「え……?」 その人は、骨と皮ばかりの、ひょろ長い痩躯の男だった。 真っ黒いローブのようなだぶだぶの服を羽織るように着ている。 そして生きているとは思えないほどに真っ白な肌、額に刻まれた紋様。 「迷い込んだのか……」 「……だ、誰……?」 「我は……我は、タナトス」 「タ、ナトス?」 「そう。我こそが、死だ」 「し……」 死……? そんな……じゃあ……じゃあ此処は、冥府だと言うの……? 頭を金槌で殴られたような衝撃を感じた。頭がくらくらとして、意識が朦朧とする。 「だが、変だな」 「え?」 「生者が生身の体で此処まで来れるなど……」 ということは……此処は冥府の奥深くなの……? 私はいつから此処に居ただろう? そんなにも深くに来るほど歩いていたかしら? 「……生者?」 痩躯の彼が眉を顰めて私をじっと見つめる。 実は私はもう死んでいるのかしら。 自分に死んでいるという実感がないだけで、 冥府の住人にさえ一瞬生者と見間違えられるほど真新しい死者なのかもしれない。 「いや……お前は――」 「――ッ!」 体がベタベタする。服が肌に張り付いて、気分が悪い。 服が水浸しになるほどに汗をかいている。 気持ちが悪かった。最悪の夢見だった。 「……どうして、あんな夢を……」 可笑しな夢だった。気味の悪い夢だった。 まだ、あの時の寒気が残っている。凍りつくかと思うほどの冷気。 さむい……。 「っ……」 嫌な夢だった。冥くて寒くて、纏わりついてくる空気が気持ち悪かった。 想像すらしたことのない可笑しな世界。冥く寂しい、世界。 そうだ……汗を流そう。そしてあんな気味の悪い夢なんて、忘れてしまおう。 そう、ただの夢なんだから。
ウヒヒwwwwwさーせんwwww