「ねえシャイターン、私が死んだら、此処にずっと居て、然るべき時には、他の人と契約してくれる?」




















「……ナニ?」
「うん、だって、私が死んだら貴方は一人じゃない。だから、新しい人を探してくれる?」
「……以外ト、契約ノ接吻ヲ?」
「うん。シャイターンが他の人とキスするのは嫌だけど、でも、一人でいて欲しくないの」
「……」
「だってね、シャイターン、私がいないと何もしないでしょう?
人と共に居る幸せなんて、知らずに生きてしまうでしょう? だから、」

貴方は――

「他ノ人間ト契約ヲシロ、ト?」
「そう。……嫌?」

「……嫌、ダ。
……ガ居ナクナルノハ、……嫌ダ」

「もう……そうじゃ、なくてね。私が居なくなったら、ちゃんと他の人と幸せになって、って言ってるの」
「……何故ダ?」
「え?」
「何故、ソノヨウナコトヲ?」
「……んー……言わなきゃ、駄目?」
「私ニ飽キタノカ」
「べ……別にそういうワケじゃないの。飽きたから捨てるなんて、私は悪女じゃないもの」

貴方に飽きることなんてない。
だって貴方は、私の知らないことをいっぱい知っているもの。
知れば知るほど、貴方を好きになっていくのよ。
飽きることなんて、ないわ。

「でもね……もし私が居なくなったら、貴方は孤独でしょう?
永遠に孤独で過ごすなんて、寂しいわ。だからちゃんと、新しい人を見つけてね」
「……ヒトリデ居ルコトハ、イケナイコトナノカ」
「そういう訳ではないけど……寂しいでしょう? 言ってたじゃない。時間に置き去りにされていた、って。
私、そんな貴方を見たくない。一人孤独にサザエさんの放送日もわからなくなるくらい放置される貴方なんて、見たくない」

貴方の哀しむところなんて、見たくないの。

「……」
「……駄目かなぁ」
「……ワカ、ッタ」
「本当? 約束、してくれる?」
「アア。シカシ……私ハヲ離サナイ。ガ私ト離レルナンテ、アリエナイ」
「それでいいの。それで……いいのよ、シャイターン」







それで――

            ……いいの。


















「……!!」
「……ごめん、ね……」
「ソンナ……ナゼ……ッ!」
「ごめんね……ごめんね、シャイターン……」
「アア……アァ……!」


「不思議ね……シャイターン。私、自分の死期が悟れたのよ。
自分はそろそろ死ぬんだ、……って。……わかっちゃったんだぁ……」


「…………!」
「ねえ、シャイターン……ちゃんと、約束……守ってね……? 私の……お願い……」
「……ナ、ンデ…………ッ」
「わかんない……けど……
残酷な永遠と謂う苦い毒を喰らったからこそ、私は此処にいるのに……永遠が、終わっちゃうなんて……」

知りたくなかった。
悟りたく、なかった。
信じたく……なかった。

「ソンナ………………」
「ごめん、ねぇ……シャイターン……ごめんね……」

本当は……一人になんて、孤独になんて……させたくないの。
けれど私はもう、駄目なの。
私の凍りついたはずの銀色の砂時計は、溶けて……また、動き出しちゃったんだ。

「愛してるよ……愛してるの、シャイターン……けど、それでも……夜には逆らえないの……」
「……、」
「愛してる……私は、貴方を愛してるわ……」
「アア……私モ、愛シテイル……ヲ、愛シテイル……」
「ありがとう……シャイターン……」




さようなら――




















「私は――永遠を、喰らうわ」

嗚呼――ノ願イ、叶エタゾ。








――ありがとう。

サザエさんな件→だって言ってたから。