「イヴェール」

意味もなく名前を呼ぶ。

「なぁに?」

意味もなく呼んだ名前に、彼はニコリと笑って答えた。

「もしも私が突然消えたとしたら、君はどうするかな」
「……どうしたの? サヴァンみたいなことを言って」

サヴァンみたいなこと。
嗚呼、それは嫌だ。
だがもういっそのこと、サヴァンのようになれば、楽になれるのだろうか。

「いいや……気になっただけさ」
「んー……たぶんね、探すと思う」
「探す?」
「うん。物語みたいに双子に探してもらうんじゃなくて、僕が、を、探す」
「……そう」

嬉しかった。ただ単純に、嬉しかった。
嗚呼、歳だろうか。涙腺が緩くて仕方がない。

「……あれ? 、泣いてる?」
「泣いてなんかないさ。目にゴミが入ってしまっただけだよ」
「痛い?」
「いいや、イヴェールが心配してくれたから、もう痛くないよ」
「でも、まだ泣いてる」

そんなまさか。
目元を、触ってみる。濡れていた。
――私は、泣いている。

「……少し、」
「え?」
「少しだけで、いい。だから……泣かせて」

彼は何も言わずに、そっと、抱きしめてくれた。
自分よりも一回り大きい私を抱きしめて、ぽんぽん、と頭を撫でてくれる。
……暖かい。
仮初の身体を持っているイヴェールが暖かいはずなんて、ないのだけれど。
それでも、暖かく、感じた。



















「……ありがとう。もう、落ち着いた」
「大丈夫?」
「……ああ。大丈夫だよ」
「良かった。になにかあったら、僕……」

イヴェールが困ったような、悲しいような顔で笑う。

「大丈夫。もう、平気だから。……ね?」







もう、大丈夫。













気がついたら本編よりもifのが増えていた愚天。 気がついたらメインよりもその他の方が増えて放置されていた愚天。 やっとの更新。でも意味がわからない。